日本橋兜町の山二証券
2009年 04月 13日
◎設計:西村好時
◎施工:清水組
◎竣工:昭和11(1936)年6月
◎構造:鉄筋コンクリート造り3階建て
◎所在地:東京都中央区日本橋兜町4-1
前2回は中央通りに残る日本橋の近代建築を紹介しましたが、今回からはそちらより東にある兜町・江戸橋界隈の近代建築を取り上げたいと思います。
そういう事で最初に紹介するのは、東京証券取引所の裏手にある山二証券の本店。建築家・西村好時(1886~1961)の設計により昭和11年に、片岡證券の本店として竣工したものです。なお大正末の竣工と紹介されることも多いですが、昭和25年に出版された西村の作品集によると昭和11年竣工と紹介されていますので、こちらの竣工年でほぼ間違いないと思います。
西村は、大正期から昭和戦前まで第一銀行の店舗営繕をはじめ、数々の銀行建築の設計を手掛けた建築家。正確な数までは把握できないのですが、戦前の建築家では不動貯金銀行の店舗営繕を主に手掛けた建築家・関根要太郎(1889~1959)と並び多くの銀行店舗の設計を手掛けた建築家であります。関根はモダンデザインの作風を銀行建築に持ち込んだ人物でしたが、西村は戦前銀行建築の定番とも言うべき西欧古典建築を自在に操った人物として知られます。またこの山二証券、西村作品の中ではスパニッシュ風の要素が入った異色の作品ですが、浮かれることがなく堅実に纏め上げたデザインは、銀行建築家と名をはせた西村らしい出来栄えといえるでしょう。
なおこの建物の裏手は、明治のはじめ渋沢栄一が第一銀行を出店させた日本の銀行発祥の地。第一銀行と深い繋がりのあった西村の作品が、この地で残っているのも運命めいたものを感じてしまいます。
隣の成瀬証券と同じ、西村好時設計のビル。こちらは成瀬証券とは全く違った意匠で、スパニッシュ風のオフィス建築です。なお、築年については1936(昭和11)年という記述もあります。ここでは成瀬証券ビル(昭和10年)との対比や、煙突や全体の雰囲気を見て、「近代建築散歩 東京・横浜編」などに記載のあった大正末期を採用しました。 外壁は、1階部分が石貼り、上層部はタイル貼りの仕上げ。屋根はスペイン瓦を用い、煙突があり、丸窓や飾りのあるアーチ窓を部分的に配したスパニッシュで印象的なビルです。鉄筋コンクリ...... more