◆旧石黒ファーマシー本社
◎設計:武田五一
◎施工:清水組
◎竣工:大正15(1926)年
◎構造:鉄筋コンクリート造3階建て
◎所在地:石川県金沢市尾張町1-10-5
金沢城やひがし茶屋街にほど近い尾張町に建つ、レトロなビルディングは、江戸期創業の石黒薬局の本社ビルとして大正15(1926)年に竣工したものだそうです。設計は東京帝国大学出身で、長年京都帝国大学の建築学科で教授を務め、関西を中心に活躍していた
建築家の武田五一(1872~1938)が設計を手掛けたと言われています。武田は助教授として東京帝大在籍中にヨーロッパに留学し、そのときアールヌーヴォーなど最新デザインの勃興に遭遇、それを機に自身の作品に最新のモダンデザインを色々と採用してきました。
尾張町百万石通りに建つ石黒ビルは、この時代ならではのルネサンススタイルを基調としたデザインで纏められています。しかしドイツ表現主義風の半円型にデザインされた階段室の小窓、現在はベージュの塗装が施されていますがスパニッシュ風デザインの軒下の装飾など、この時代ならではの最先端のモダンデザインがさりげなく用いられているのが、この作品の見所と言えるでしょう。
なおこのビルの左隣には、石黒薬局の江戸後期に竣工した土蔵造りの店舗が建っています。金沢では
十間町の中島商店(設計:村野藤吾、昭和7年築)をはじめ、明治期創業の老舗商店が後年になり既存店舗の脇に新たなビルを増築させる手法が数多く用いられていたと想像されます。これまで使っていた店舗を壊さず、新たな店舗を建てるという手法は現在の視点から見ると、とても賞賛すべき判断だったのではないかと思います。
しかし大正末に建てられた本社ビルは、ここ数年、空き家の状態が続いているとのこと。何とか有効活用して頂きたい、美しい建築作品であります。
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