◆旧東京医学校本館 ◎設計:西郷元善
◎施工:不詳
◎竣工:明治9(1876)年
◎構造:木造外壁漆喰塗り2階建て
◎所在地:東京都文京区白山3-7-1(小石川植物園内)
❖国指定重要文化財
今年の桜の開花はとんでもなく早かったですが、まだ桜のつぼみがほころんだ頃に訪ねたのが、東京白山の小石川植物園でした。
小石川植物園は現在は東京大学付属の植物園として知られていますが、その歴史は江戸時代に遡り、江戸幕府が開園した小石川御薬園(こいしかわおやくえん)がそのルーツだといいます。また明治に入ると東京帝国大学にその管轄は引き継がれ、一般公開がおこなわれるようになりました。この植物園、学術研究がメインということもあり、環境省が管理する
新宿御苑や、東京都が管理する
旧岩崎邸庭園や
清澄庭園や殿ヶ谷度戸庭園などの都営庭園に比べ華やかさには欠けますが、なかなか楽しめる庭園でした。
そしてその庭園の北側には、一棟の赤い色をした不思議な洋館が建っています。もとは東京医学校(現在の東大医学部)の建物だったそうで、明治9(1876)年に文京区の本郷元冨士町に建てられたものを現在地に移築したものだそうです。また竣工当初は少し違う姿だったと言いますが、明治の後年になり現在の姿へ改められたと言います。
そのような洋館ですが、明治初期の建物らしく建物細部のデザインに和風のモチーフを取り入れた、擬洋風式で仕上がっています。明治初期の写真など見ると、当時の東京はこのような擬洋風の建物がたくさん建てられたようですが、都内で現存する本格的な擬洋風の洋館はこの赤い洋館のみになってしまったようです。そのような意味ではとても貴重な建築作品と言えるでしょう。小石川植物園の自然をバックに、遠く明治の東京の風景を想像してしまった私でありました・・・・・。