千葉トヨペット本社、旧日本勧業銀行本店
2010年 10月 02日
◎設計:妻木頼黄、武田五一(製図監督)
◎施工:直営
◎竣工:明治32(1899)年6月
◎移築:昭和40(1965)年
◎構造:木造2階建て
◎所在地:千葉市美浜区稲毛海岸4-5-1
❖国登録有形文化財
先日、別プログで紹介させていただいた旧神谷伝兵衛別邸(大正7年築)の帰りに寄ったのが、美浜区の千葉トヨペット本社。神谷邸の記事でも触れましたが、現在の国道14号線から南西にあたる場所は戦後埋め立て造成がされた地域で、昭和40年代以降に建てられた新興の建造物で街並みが形成されています。しかしそのようなニュータウンに、和風の渋い建築が・・・・・。
実はこれ、明治32年に東京千代田区の内幸町に建てられた日本勧業銀行の本店だった建物を移築してきたものであります。またこの建物、内幸町の本店が建て替えになるのを機に今の京成電鉄が部材を買収し、習志野の谷津遊園に大正15年に移築。また昭和15年には千葉市役所として同市内に再度移築、そして同市役所も新庁舎を建設することになり、昭和40年に千葉トヨペットが建物を譲り受け、現在の安住の地を得た訳です。また明治以降の歴史的建造物など殆ど注目されなかった高度成長期の時期に、この建物を会社のシンボルとして移築した千葉トヨペットの先見性と文化的価値の認識には大いに感心するところです。
さてこの和風建築の旧日本勧業銀行本店でもうひとつ注目すべきことは、明治建築界の大家・妻木頼黄(1859~1916)が設計を手掛けていることでしょう。妻木といえばドイツ留学を経験を持ち、その作風もドイツ風だったことが知られていますが、和風建築の日本勧業銀行は異色の作品だと言えます。
武田五一が関与した作品として見たいと思っていた建物です。
思いっきり和風ですね。
とても銀行だったとは思えません。
よくある和風のクラシックホテルのようです。
武田さんには結構和風建築がありますが、
妻木さんといえば、洋風の様式主義ばかりと思っていました。
武田吾一もそうですが、ドイツルネサンス建築に傾倒していた妻木頼黄という視点から見ても不思議な作品だと思います。