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西武ライオンズ球場(西武ドーム)

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◆西武ライオンズ球場(西武ドーム)
   ◎設計:池原義郎
   ◎竣工:昭和54(1979)年3月→球場スタンド部分
         平成11(1999)年3月→ドーム屋根部分
   ◎施工:清水建設→球場スタンド部分
         鹿島建設→ドーム部分
   ◎構造:鉄筋コンクリート造・・・・・スタンド部分
   ◎所在地:埼玉県所沢市上山口2135


 本日は完全に番外編の記事になってしまいますが、我が地元のプロ野球チーム・埼玉西武ライオンズの本拠地である西武ドーム(旧西武ライオンズ球場)を紹介したいと思います。
 この西武球場は1978年に旧コクドグループの総帥・堤義明氏により計画されたもので、同年の秋に福岡に本拠地を置くクラウンライター・ライオンズ(旧西鉄ライオンズ~太平洋クラブライオンズ)をコクド(西武)グループが買収、そして誕生した西武ライオンズがこの場所をホームグランドにする事になり、約半年という突貫工事で建設されたのがこの西武ライオンズ球場でした。またそれと同時に球場ビルを置く本球場の建設のほか、サブグランドや屋内練習場、選手寮、観客を乗り降りさせる6本のホームを持つ大型の駅舎も建設され、その総工費は80億円と当時としては破格のものになりました。

 そしてこの球場の設計を担当したのが、建築家の池原義郎氏(1928~)です。池原氏は早稲田大学で昭和を代表する建築家の故・今井兼次氏(1895~1987)のもとで学び、今井氏の建築の美学を継承・発展させた人物として知られています。
 また池原氏が設計を手掛けた西武球場の特徴としては、丘陵地の斜面に立地していることもあり、ホーム側を斜面の最高地点にし、外野のハックスクリーン側をその坂下にしている事でしょう。それにより内野から外野へ向けて徐々に低くなるという、あの独特な観客席が完成した訳です。またこれは日米の野球場を研究されている方から既に指摘されていますが、西武球場は米MLBの球団・カンサスシティー・ロイヤルズの本拠地・カウフマン・スタジアム(1973年築)をモデルにしており、従来の日本国内の野球場にはなかった独特な雰囲気を持ったデザインとなりました。特に横長のバックスクリーンのスコアボードや、外野奥の天然芝の空きスペース(現在は外野席に転用)、外野に向けて少しずつ下っていく形状の観客席は、米カウフマン・スタジアムの影響が強く見られます。
 あとバックネット裏のロイヤルシートを除いた一般の出入口は、バックスクリーン・スコアボード裏の二箇所のみ。外周通路を上ったり、客席通路をグラウンドを見下ろしながら各人の席へ移動するというスタイルも、一般のスタジアムでは珍しいパターンです。

 ちなみに建設者であるコクド(西武)グループは、新球場建設に際しアメリカン・スタイルの球場の完成を目指していたそうで、その極め付けとして約2万7千の座席を米国から直輸入。またこの周辺にある狭山丘陵の自然と調和させるため、座席の色にはこの当時としては珍しい黄緑色を採用しています。この座席の色、正直なところテレビ映えはしませんが、色とりどりの派手なカラーで散りばめられた国内の各球場の座席と比較すると、プレーに集中できる効果を持っているように思えます。
 またスタンド部分の客席は突貫工事で作られたこともあり、階段が急な場所などもありますが、横一列の座席数は6席から9席に設定されており、移動しやすい環境になっているのもこの球場の誇れる点でしょう。あと80年代後半から90年代後半に相次いで国内に誕生した、多目的利用が出来るドームやスタジアムの円形タイプの観客席と比較すると、この西武球場はグラウンド面に適応した客席が配置されており、プレーに集中して見れるというのもこの球場の最大の売りであります。

 竣工当時は日米野球で来日したメジャーリーグの選手からも、その美しさを絶賛された西武球場でしたが、周辺に多摩湖・狭山湖という水源地があることもあり、度重なる雨による試合中止・中断に長年悩まされていました。そのような問題を解決させるために、1997年のシーズン途中からドーム化建設工事に着手。98年の第1期工事完成に引き続き、99年開幕前にはテフロン屋根の設置工事が完成、また2009年春には一部観客席の改修、フィールドシートの設置工事が完成し、現在のような姿へとなっています。
 一応、球場名は『ドーム』となっていますが、外周通路に壁を設けていない構造のため、以前のような周辺の自然環境を楽しめる作りになっています。しかし春先や晩秋はテフロン屋根が日光を遮断してしまうため昼の試合でも底冷えしますし、夏は換気設備がないために熱が観客席にたまり相当な暑さになってしまうという問題点を抱えています。しょっちゅう試合中止になった以前の事を考えれば、かなりの改善はされたと思いますが、コクドグループが崩壊した現在、劇的な球場改修は無理だと考えられます。

 しかし我が地元の球団・西武ライオンズの選手たちの素晴らしいプレーを見たく、また球場へ通ってしまう私であります。試合の方は常に充実したものになっていますが(の筈です・・・・)、周辺自然環境と調和した球場を満喫したい方は、4月下旬~6月上旬、9月のデーゲームでの観戦をお勧めします。都心からかなり遠いですが、その美しさをもっと称賛されていい球場、機会があれば是非一度お立ち寄りください・・・・・。

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70年代らしいレトロフューチャー感溢れるスコアボードとバックスクリーンが、この球場の象徴。
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99年に設置工事が完成した西武球場のドーム部分。グラウンド部分から最大で65メートルの高さがあるという。
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こちらがサブグランドと屋内練習場。日本のプロ野球チームで、本球場のほか練習施設を同じ場所に置いた球場というのは最近では珍しい事例になった。
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こちらは2009年に設置されたフィールドビューシート。
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by tokyo-farwest-net | 2012-09-01 13:01 | ■埼玉・所沢 | Trackback | Comments(0)

『関根要太郎研究室@はこだて』の番外編プログ。本編で取り上げていない近代建築の写真を中心に紹介していきます。


by ヨウタロウ撮影員
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